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気管支喘息

アレルギー素因などの個体因子とアレルゲン等の環境因子が関係して気道の慢性炎症が生じ、気道過敏性の亢進と可逆性の気道狭窄を来す疾患です。

原因について

  • アトピー疾患
  • 出生時低体重
  • 肥満
  • ダニ
  • ハウスダスト
  • ペット動物の垢
  • 大気汚染
  • 喫煙
  • 薬剤(アスピリン)

などが原因となります。有症率は小児、成人ともに近年増加してきています。

成人発症の気管支喘息もよくみられます。

症状

繰り返される環境因子の曝露により気道炎症、気道平滑筋収縮、気道分泌物増加、気道上皮剥離、気道平滑筋の肥厚などが生じ、気道過敏性の亢進と気道構造再構築が繰り返され可逆性の気流制限が生じます。
咳嗽、喘鳴、呼気性呼吸困難が出現します。
症状の発作は夜間や早朝に多く、また季節の変わり目に多くみられます。

診断・検査

問診・身体所見、血液検査、喀痰検査、呼吸機能検査、呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)、皮膚反応アレルゲン検査などをおこない総合的に診断することが必要になります。
当院では、問診、身体検査、血液検査をおこない病態を推察し重症度により専門医受診へ紹介引き継ぎをさせていただいています。

治療

当院では吸入ステロイド薬、長時間作用性抗コリン吸入薬、長時間作用性β2刺激吸入薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放製剤、経口ステロイド薬、などをおこなっています。
難治重症例では抗IgE抗体製剤、抗IL-5抗体製剤および抗IL-5受容体α鎖抗体製剤、気管支熱形成術による治療が必要になりますので専門医に紹介引き継ぎをしています。

成人喘息の治療に必要な薬剤(抗喘息薬)は「長期管理薬」と「発作治療薬」の2種類に大別されます。長期管理薬は「長期管理のために継続的に使用しコントロール良好を目指す薬剤」、発作治療薬は「喘息発作治療のために短期的に使用する薬剤」です。発作治療薬は短時間作用性吸入β2刺激薬(サルブタモール、プロカテロール)を使用します。長期管理薬にはいくつか種類があります。副腎皮質ステロイド薬、長時間作用性β2刺激薬、吸入ステロイド薬/長時間作用性吸入β2刺激薬配合剤、ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放製剤、長時間作用性吸入抗コリン薬、吸入ステロイド薬/長時間作用性吸入抗コリン薬/長時間作用性吸入β2刺激薬3剤配合剤があります。

(副腎皮質ステロイド薬)

現在の喘息治療における最も効果的な抗炎症薬。

ステロイド薬には①炎症細胞の肺・気道内への浸潤抑制、②血管の透過性抑制、③気道分泌の抑制、④気道過敏性の抑制、⑤サイトカイン産生の抑制、⑥β2刺激薬の作用増強、⑦アラキドン酸の代謝阻害によるロイコトリエンおよびプロスタグランジンの産生抑制、の効果があります。

喘息の長期管理薬としては吸入ステロイド薬が基本です。

ステロイド薬には静脈注射薬、筋肉注射薬、経口薬、吸入薬の4種類の剤形がありますが副作用は吸入薬が圧倒的に少ないです。吸入ステロイド薬は①喘息症状を軽減する、②生活の質および呼吸機能を改善する、③気道過敏性を軽減する、④気道の炎症を制御する、⑤急性増悪(発作)の回数と強度を改善する、⑥治療後長期の吸入ステロイド薬の維持量を減少させる、⑦気道壁のリモデリング(構造改変)を抑制する、⑧喘息死を減少させる、などの効果があります。

吸入ステロイド薬のデバイス(器具)としては2種類あります。

・加圧噴霧式定量吸入器(pMDI)・・ベクロメタゾン、フルチカゾンプロピオン酸、シクレソニド

・ドライパウダー定量吸入器(DPI)・・ブテソニド、モメタゾン、フルチカゾンフランカルボン酸、フルチカゾンプロピオン酸

どちらもその使用には一長一短ありますので患者さん個々にあわせて選択します。

加圧噴霧式定量吸入器は吸入器に充填された薬剤を一定量のエアロゾルとして噴霧するデバイスです。噴霧と吸気の同調操作が必要ですが吸入補助具スペーサーを用いることで使用が容易になります。吸入後に息こらえをすると薬剤の肺内定着率が増加します。噴射用溶媒が必要であり添加物である無水エタノールに違和感を感じることもあります。

ドライパウダー定量吸入器は一定量の粉末状薬剤を吸気により飛散させて吸入するデバイスです。薬剤が肺内に到達するためにはある程度の吸気流速が必要であり、力強く深く吸う必要があるため小児や高齢者には不向きなところが難点です。

吸入ステロイド薬の吸入後は口腔内への余分な薬剤沈着(嗄声、口腔カンジダ症、口腔咽喉刺激感の原因になる)を減らすためにうがいを行います。

各種吸入ステロイド薬の特徴を述べると、

〈シクレソニド(商品名:オルベスコ)〉

平均粒子径 1.1μm。すべての吸入ステロイド薬の中で粒子径が最も小さく肺内沈着率が非常に高い。

〈ブデソニド(商品名:パルミコート)〉

平均粒子径 2.6μm。咽喉頭症状は比較的出現しにくい 妊婦への投与の安全性が高い

〈フルチカゾンフランカルボン酸エステル(商品名:アニュイティ)〉

強い抗炎症効果を有し長時間効果が持続するため1日1回吸入でよい

〈フルチカゾンプロピオン酸エステル(商品名:フルタイド)〉

平均粒子径 5.2μm。 粒子径が大きく肺内沈着率も低いが抗炎症効果は最も強い

咽喉頭症状が出現しやすい。

〈ベクロメタゾン(商品名:キュバール)〉

平均粒子径 1.1μmと肺内沈着率は高いが抗炎症効果は弱い

〈モメタゾン(商品名:アズマネックス)〉

平均粒子径 2μm とDPI製剤の中では粒子径が最小。抗炎症効果も強い

咽喉頭症状が比較的出現しにくい。

があげられます。

薬剤の平均粒子径が小さいほど効果が高いともいえず各薬剤にはそれぞれ一長一短あり、実臨床では個々の病態に応じて薬剤の選択をしていきます。

 

(長時間作用性β2刺激薬)

β2刺激薬は強力な気管支拡張薬で、気道平滑筋のβ2受容体に作用して気管支平滑筋を弛緩させて繊毛運動による気道分泌液の排泄を促します。剤形は吸入、貼付、経口があります。長期管理薬として用いるときは吸入剤を使用し必ず吸入ステロイド薬と併用して用います。併用療法により吸入ステロイド薬の減量が可能になり、喘息のコントロールが良好になります。副作用として振戦、動悸、頻脈などがみとめられます。

ツロブテロール(商品名:ホクナリン)貼付剤

サルメテロール(商品名:セレベント)吸入薬 があります。

(吸入ステロイド薬/長時間作用性吸入β2刺激薬配合剤)

フルチカゾンプロピオン酸/サルメテロール(商品名:アドエア)

ブテソニド/ホルモテロール(商品名:シムビコート)

フルチカゾンプロピオン酸/ホルモテロール(商品名:フルティフォーム)

フルチカゾンフランカルボン酸/ビランテロール(商品名:レルベア)

モメタゾン/インダカテロール(商品名:アテキュラ)

があります。

配合剤の利点は、吸入ステロイド薬あるいは長時間作用性吸入β2刺激薬を単独個々に吸入するより有効性が高い、またウイルス感染症を契機とした喘息急性増悪が吸入ステロイド薬単独使用よりも減少することがあげられます。

ホルモテロールの気管支拡張効果は即効性があるためブテソニド/ホルモテロール(商品名:シムビコート)は定期吸入に加え追加吸入することで症状の安定、増悪頻度の減少が期待されます。

(ロイコトリエン受容体拮抗薬)

ロイコトリエン受容体拮抗薬は気管支拡張作用と気道炎症抑制作用を有し、喘息症状、呼吸機能、喘息増悪回数を有意に改善させます。アレルギー性鼻炎合併喘息、運動誘発喘息、アスピリン喘息患者の長期管理において有用性が高いとされています。また妊婦にも比較的安全性が高いと考えられています。

モンテルカスト(商品名:キプレス、シングレア)

プランルカスト(商品名:オノン)

があります。

(テオフィリン徐放製剤)

テオフィリン徐放製剤は気管支拡張作用、粘液繊毛輸送能の促進作用、抗炎症作用を有していますが、長時間作用性吸入β2刺激薬やロイコトリエン受容体拮抗薬に比較してその有効性はやや劣ります。また副作用として悪心、嘔吐、動悸、頻脈、痙攣があり血中濃度測定が必要なため使用しにくい薬剤です。

テオフィリン(商品名:テオドール、ユニフィルLA)。

(長時間作用性吸入抗コリン薬)

チオトロピウムは気道平滑筋のムスカリンM3受容体に作用し気管支を長時間拡張させ呼吸機能を有意に改善させます。高用量の吸入ステロイド薬および長時間作用性吸入β2刺激薬の治療をおこなっても喘息症状が残る病態に使用します。副作用として口渇があります。また緑内障や前立腺肥大症をもっている方には使用できません。

チオトロピウム(商品名:スピリーバレスピマット)があります。

(吸入ステロイド薬/長時間作用性吸入抗コリン薬/長時間作用性吸入β2刺激薬配合剤)

吸入ステロイド薬/長時間作用性吸入β2刺激薬配合剤の2剤併用よりも喘息増悪抑制効果が高いとされています。また末梢血好酸球数が300/μL以上多い病態で使用すると効果が高いとされています。

フルチカゾンフランカルボン酸・ウメクリジニウム・ビランテロール(商品名:テリルジー)

モメタゾン・グリコピロニウム・インダカテロール(商品名:エナジア)

があります。

 

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